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研 究



ロータリー掘削

1859年のエドウィン・ドレークによる石油掘削が近代石油産業の始まりであったとすれば、それから150年が経ちます。石油・天然ガス資源には国家戦略物資の側面があり、また現代の我われの生活は石油なくして何ひとつ満足に成り立たないといっても過言ではないように、石油開発の重要性はいまさら言うに及びません。日本には石油や天然ガスを生産するフィールドが少ないために、国内の産業規模は小さいですが、日本の石油開発関連会社とそこに働く技術者、そしてそれらの産業を支える我々大学や研究機関は、世界のメジャー・オイル・カンパニーと互角に渡り合えるだけの技術力を十分に有しています。

ロータリー掘削法(右図)による坑井掘削は、石油・天然ガス開発の根幹を成す技術のひとつであり、10,000 mを超える深度の坑井を掘削できる最先端の掘削技術は、今なお十分に解明の進んでいない地球の内部を理解し、地殻深部を開発・利用するための必須技術といえます。また坑井掘削技術は、地熱資源やメタンハイドレートの開発、掘削船「ちきゅう」に代表される地球深部探査のような科学掘削、さらにはCO2や高レベル放射性廃棄物の地中貯留などの環境・防災の分野でも重要な役割を果たします。我われは現在、坑井掘削技術に関する以下のような研究に取り組んでいます。


坑井掘削技術

石油・天然ガス開発においては、いかに速くかつ安価に坑井を掘削するかが普遍的な課題です。ロータリー掘削による坑井掘削の現場では、ビット荷重やトルク、掘進率などの主に地上で計測されるデータを常時監視することによって坑井内の状態を把握し、より効率的に坑井を掘削する努力がなされています。しかし、計測データをもとに人間の目で直接見ることのできない地下数千メートルの坑井内の状態を正確に把握することは極めて難しく、坑井掘削は今なお経験的技術に依るところが大きいのが現状です。

この研究は、十数年前に石油公団石油開発技術センターで行われたEM-MWD(Electro-Magnetic Measurement While Drilling System)坑底センサー開発に関する研究に端を発し、掘削時のビット振動を計測し、その振動特性の変化からビットの摩耗状態や掘削中の地層を診断することを最終目的としています。現在は、その要素技術の開発として以下のような研究を実施しています。


シミュレーション(Click to enlarge)
  
  • 室内掘削実験(写真左)による掘削挙動の基礎解析
  • ローラーコーンビットの動力学モデルの構築
  • 振動データの解析によるビット摩耗診断手法の開発
  • 数値シミュレーションによるBHAの挙動解析
  • 掘進率向上のためのビットデザイン及び掘削条件の最適化
この研究は、新井科学技術振興財団による研究助成を受けています。


傾斜井掘削時のカッティングストランスポート/ホールクリーニング


掘屑堆積挙動のシミュレーション

傾斜・水平坑井掘削時に坑井内に滞留あるいは堆積した掘屑(カッティングス)は、ドリルパイプの抑留や高トルク・ドラグの発生、泥水ポンプ圧の増大など重大な掘削トラブルにつながりかねない坑内状況の変化をもたらします。大偏距掘削(Extended Reach Drilling、ERD)のように長い高傾斜区間を安全かつ効率的に掘削するためには、適切な掘屑の運搬・除去(カッティングストランスポートあるいはホールクリーニング)がその成否を決める鍵のひとつになります。

現在、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との共同研究として、実験と理論の両側面から傾斜坑井内のカッティングストランスポートに関する研究を、国際石油開発帝石(株)(INPEX)とは実際の坑井データを用いたシミュレーションスタディを実施しています。

  • 柏崎市のJOGMECテストフィールドに設置されている大型フローループを用いた実験
  • 2流体モデルを用いた非定常カッティングストランスポート挙動のモデリング(右図
  • 上記BHA挙動解析との連成を考慮したカッティングストランスポート挙動のモデリングと新しい数値計算技術の利用
  • 実用的なカッティングストランスポートシミュレータの開発(みずほ情報総研と連携したソフトウエア開発)
  • ECDコントロールや坑壁不安定性改善などへの応用


超臨界地熱資源開発

日本は、米国、インドネシアに続く世界第3位の地熱資源大国ですが、その約80%が自然公園の中にあるため、長らくその開発は国により制限されてきました。2011年3月11日の東日本大震災での福島第1原子力発電所の事故を受け、国のエネルギー政策の見直しが議論される中で、有望な再生可能エネルギーの一つとして、地熱エネルギーが注目を集め始めています。地熱資源は、石油・天然ガス開発と同じように高温地層に向けて坑井を掘削して開発します。高温環境下での高度な掘削技術の開発が急務となっています。
  • 環境省地球温暖化対策技術開発等事業「自然環境への悪影響を回避・最小化した地熱発電に関する技術開発」(平成23〜25年度、研究組織:地熱技術開発、帝石削井工業、エスケイエンジニアリング、東京大学)において 地熱高傾斜坑井掘削時のカッティングストランスポートの研究を担当
  • 村岡教授(弘前大学)、浅沼氏(産総研)、伊藤(高)教授、土屋教授(東北大学)、伊藤(久)氏(JAMSTEC)ら国内外9名の地熱研究者により提案された国際陸上科学掘削計画(ICDP、International Continental Scientific Drilling Program)ワークショップ「日本脆性帯超越計画(JBBP、Japan Beyond-Brittle Project)−延性帯における涵養地熱システム(EGS、Engineered Geothermal System)の可能性実証のための科学掘削」に技術開発グループのメンバーとして参加
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のエネルギー・環境新技術先導研究による超臨界地熱資源開発FSプロジェクト「島弧日本のテラワットエネルギー創成先導研究」に参画

松川地熱発電所(岩手県八幡平市)




Friday, June 09, 2017 by S. Naganawa